以前ベンダロックインについて書いた記事の中で高知県の電子行政の取り組みを紹介しました。
またこの“高知県方式”に新たな注目が集まっています。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ ◎古いプログラムを有効活用 “高知県方式”に注目 47NEWS(2009/01/17 17:48 【共同通信】) 汎用機と呼ばれる業務用の大型コンピューターを、より安価なシステムに更新する際に、以前の機種で動いていたプログラムを有効活用する手法を、高知県と地元IT企業が開発した。 “高知県方式”と呼ばれ、特許も取得。ほかの自治体などから「費用が安く期間も短い」と注目されている。 汎用機は高性能だが、高価で保守費用がかさむのが難点。最近は保守が簡単な複数の小型コンピューターをつないだシステムへの切り替えが盛んだ。 従来はプログラムを新たに作り直す必要があったが、高知電子計算センター(高知市)がプログラムを自動変換する技術を開発。1999年に始まった県の業務システム更新に用いた。 当初は3年かかるとみられていた汎用機1台の更新が1年半で完了。費用も4分の1の2億6000万円で済んだ。 県情報政策課の吉本幸弘主任は「高知県方式が広まれば、地域の産業振興や雇用の拡大につながる」と期待している。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 面白い内容でですが、この記事で私が注目したのは「最近は保守が簡単な複数の小型コンピューターをつないだシステムへの切り替えが盛んだ」の部分です。 情報業界は ”クラウドコンピューティング” へと流れが進んでいるのは周知のことですが、この動きは電子行政にも波及しています。高価なメインフレームを使うより、複数のサーバーで分散処理する方が導入コストが下げられます。また、メンテナンスもシステム完全停止しなくてよいし、ハードの更新も必要な部分だけで済みます。それに可能な範囲で処理をアウトソーシングすれば、処理効率を上げつつコストも下げられます。何より可能な範囲で官民でデーターを共有する事は、社会全体にとってもプラスとなります。 今後はこう言ったネットワーク分散処理が、スタンダードになってくるのでしょうね。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ◎Windows 7が示すコンピュータの歴史的転換 文● 池田信夫/経済学者 ASCII.jp(2009年01月21日 06時00分更新) 「右肩上がりの時代」は終わった Windows 7のベータ版のダウンロードが始まった。ASCII.jpでもいろいろなレポートが出ているが、おおむね評判はいいようだ(関連記事)。 私もダウンロードして使ってみたが、よくも悪くもVistaとあまり変わらないというのが第一印象だ。カーネルはVistaのSP1と同じだというから、互換性もほとんど問題ないだろう。 Vistaはセキュリティや検索機能の強化などを売り物にしたが、結果的にはシステムが重くなり、ソフトウェアの実行にいちいち確認メッセージが出てくる、使いにくいOSになってしまった。それにくらべてWindows 7は「あまり新機能がなく物足りない」という意見もあるが、私はこの物足りなさに意味があると思う。 特に重要な変化は、OSが使用するメモリをSP1より減らしたことだ。要求仕様が前のバージョンより少なくなるのは、Windowsの歴史で初めてのことである。開発責任者のスティーブン・シノフスキー氏も、パフォーマンスの向上を重点項目に掲げている。ユーザーの関心も、Netbookのような小さなコンピュータで動くかどうかに集まっている。 この変化の意味は大きい。これまでWindowsはバージョンアップするたびに重装備になり、それに対応してハードウェアも大きくなってきた。しかしムーアの法則(半導体の性能は3年で4倍になる)によれば、コンピュータの性能は10年前の100倍だ。つまり3万円のNetbookの性能は、10 年前に300万円した大型サーバーと変わらないことになる。これは個人用のコンピュータの性能としては、もう十分だ。 つまり今、性能への要求が絶対的に飽和したという、コンピュータの歴史はじまって以来の出来事が起こっているのだ。これはハードウェア業界にとっては深刻な問題だ。「アンディ・グローブが与え、ビル・ゲイツが奪う」と言われるように、ムーアの法則によって向上したコンピュータの性能を肥大化したソフトウェアが食い潰し、それによって新しいコンピュータへの買い替えを強いる、という形でIT業界は拡大してきたが、その右肩上がりの時代が終わったのだ。 サービスとインフラに二極化するIT産業 企業の情報サービスにも、大きな変化が起きている。グーグルやアマゾンが外部にサーバーのインフラを貸すクラウド・コンピューティングによって、企業が情報サービスを行なうために自前のインフラを持つ意味はなくなった。 先日ある大企業が、グループ内のサーバーを統合する作業を行なった。情報システム部門の見積もりでは、運用コストは月数百万円だったが、コンサルタントはアマゾンの「Amazon EC2」を使ったシステム構築を提案した。これは米国にあるアマゾンのサーバーを外部ユーザーが使えるサービスで、コストはなんと月2万円。システム部門は「信頼性がない」とか「米国にサーバーを置くのは危ない」などと反対したが、性能はほとんど変わらないので、社長の判断でサービスはEC2に移行することになった。 私も来週、ウェブ上で専門家が意見を発表するためのサイトを開設する。当初は会社を設立してサーバーを立ち上げるつもりだったが、ライブドアから「当社の始める複数アカウント・サービスを使ってはどうか」という提案があった。その料金は月わずか260円。形はブログ・サービスだが、中身は大容量のウェブ・ホスティングである。 不況によって広告費が激減し、大手メディアは赤字に苦しんでいるが、ネット企業は健闘している。楽天の営業利益は36%伸び、「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エーは63%、カカクコムは193%も伸びた(2008年度中間決算)。ネット企業の年間売り上げは数十億円だが、インフラも外部のホスティングを使っているため、需要が減ったら借りるサーバーを減らせばよく、不況に強いのだ。 従来型のIT企業では、インフラが大きな固定費になると同時に、その資金調達が参入障壁になって先行者利益が維持できた。しかしクラウドという低コストの破壊的イノベーションによって、情報サービスでは、小規模なローコスト企業の利益率が大企業をしのぐようになった。 他方インフラは、数十万台のサーバーを全世界に最適配置する巨大企業でなければ競争できない。日本でもクラウドを売り物にするIT企業が増えているが、電気代や人件費の高い国内にサーバーを置いたのでは、IBMやグーグルに勝てるはずがない。クラウド・コンピューティングは、全世界で数社に集約されるだろう。 日本の製造業は、携帯電話から自動車に至るまで、高機能・高価格の持続的イノベーションによって収益を確保してきたが、そういう市場は今回の世界不況で崩壊した。今後のIT産業は、個々のユーザーに最適化したサービスを無料で提供する小企業と、グローバルにインフラを保有してローコストで提供する巨大企業に二極化するだろう。それはあまり目立たないが、売り上げ増からコスト削減へというコンピュータの歴史が始まって以来の転換である。
by paas99
| 2009-01-20 23:26
| 電子行政
|
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